かって超売れっ子のポップスター、今でもカーネギーホールでコンサートをやればチケット完売の全米スター、自家用ジェットで移動するセレブだが、作曲活動から離れて何年もたち、人気アーティストとしての盛りも過ぎてしまったダニー・コリンズ(アル・パチーノ)。そんなある日、マネージャーから古い手紙を見つけたと渡される。それは駆け出しだった43年前の自分にジョン・レノンが送ってくれたもので、富や名声に自分を見失わず、音楽と真摯(しんし)に向き合うようにとつづられていた。それを読んだ彼は人生をやり直そうと決意してツアーをキャンセルし、一度も会ったことのない息子を訪ねる。
アルパチーノは今年75、背は縮んだが相変わらず口は達者で、四六時中アネットベニングを口説く動きの軽さは見習いたいものだ。ところでコロンビアピクチャーズの女神のモデルはアネットベニングと長く信じていたが、どうも違っていたらしい。ご存知の方いらっしゃいませんか?
息子は「ブルージャスミン」で妹の恋人役、「フードトラック」仲間だったパープーなメキシカンだが、今回はその娘が芸達者なADHDでかわいそうなのに,本人は堅気だが白血病とダブルで難病もので、金のことなら心配するなと、それを助けるアルパチーノが少しも嫌味がなく、いやでも好人物になる。ラストの病院でのやりとりも泣かせる。
新聞で見たが、始めの演出「エルヴィスオンステージ」を思い出す登場時、ツアー中のカーネギーホール「シカゴ」のコンサート中の幕間10分を借りて、観衆もそのままで撮ったとか。ファンとはありがたいものですね。始終流れるジョンレノンの歌も、脚本を見たオノヨーコの快諾により、ここぞというところで聴かせます。