中学生の頃だったかアポロ宇宙船が月面着陸した時、丸広の紀伊国屋書店で「LIFE」を買いました。写真週刊誌の元祖でしたがテレビの普及で年一回になり、月1回になり、2000年に廃刊になったそうです。同じ頃リーダーズダイジェストもよく読んでいましたが、日本版も消えてしまいました。
ウォルターはLIFE社に勤めながら、華々しい部署とは無縁の殺風景な部屋で、写真の管理に身をささげてきた男。見た目も地味で、どこの会社にも1人は必ずいるような目立たない男だ。独身で母の世話をしており、とにかく真面目だけがとりえのような人物。この設定がしっかりしているお陰で、ウォルターを自然と応援する気持ちが芽生える。写真家ショーンを追う旅路での冒険の数々は、空想好きのウォルターのフィルターを通し、奇想天外な出来事も楽しく見ることができる。大都会から辺境へ目まぐるしく舞台は変わるが、どんな場所にいても一つの目的を持って行動する者は強いもので、凡庸な男ウォルターがだんだんヒーローじみて見えてくる。ウォルターの視点でコロコロと変化していくネガの行方が、映画の面白さのカギとなっている。空想、妄想とどこから現実なのか最後まで判らないこういう映画が好きだ。
街の中の建物、道路標識、看板などにテロップをはめ込む方法はなんと言う仕掛けか知らないが、「アルフィー」にもあった、そのときの心情を表すのに印象深く、邦画でも誰かやったらよいのにと思う。