悪人

20100913.jpg 2004年、吉田修一の「ランドマーク」を読みました。大宮のパチンコ屋のサーチライトは天候によってかなり遠くからでも雲に映って見えます。大宮の食堂、ヤンキーな恋人たち、スワッピングに踏み切れない主人公、日本中どこの地方都市にでもあるような乾いた風景を、見事に描写していました。桐野夏生のモノローグで進行するストーリーと似て好きです。
 埼玉県の作家かなと思っていたら、「悪人」では全編佐賀か長崎弁で、読んでいるうちに、だんだんと土地の言葉がクッションおかずにスッと入ってきます。
 本の中で、子供の頃、祐一は男癖の悪い母親に灯台の見える波止場に置き去りにされ、そこで佳男、佳乃親子と接点があったこと、祖母房枝は病気の夫と祐一の世話をすることによって、孤独を克服して、更に乗り越えて強く生きようと決心すること、石橋一家の立ち直っていくところなど、映像では難しいながらも、原作にぴったりのキャスト、高度な演技で伝えようとしていることが分かります。悲しい映画でした。

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