今日、16号を爆走するブガティを見て思い出しました。
大藪春彦は、敗戦により朝鮮から引揚の際に、日本軍高官はさっさと帰国し、市民、兵士は、、ソ連軍兵士に同胞が虫のように虐殺され、自分たちも命からがら逃げ帰ってきて、国家は全くあてにならないといっていました。小説では、どのヒーローも己の肉体と、銃でしか頼るもののない、徹底したストイックさで、あらゆる敵を射殺し、追われれば、小便を漏らしながらも逃げ、反撃の機会を狙い、死を持って報復します。大藪作品に共通するのは銃、女、速い車です。
「汚れた英雄」は殺人こそありませんが、「北野晶夫」が2輪レーサーとして、日本から世界に羽ばたく物語です。日本が進駐軍が統治するなか、順調に経済発展するのと同じ頃、しかし、小説は、立身出世とは全く無縁の、自分の才能だけでヨーロッパの王室さえも凌いでゆく、徒党を組む仲間もいなければ、頼る親もいない、孤独な青年の大冒険です。角川映画では、レーサーとしての「北野晶夫」の部分のみ、草刈正雄が演じて好評でした。カーブを曲がるときのハングアウトがしびれました。